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執筆者の写真tatamize78

ステンカラーコート2021

更新日:2021年9月10日






ステンカラーコートを2021年、また製作できました。


「また製作できた」というのには、私なりの感慨深さがあります。



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ブランド名を付けて洋服を創り始めて二十数年。TATAMIZEという屋号にしてからは18年目です。

今まで、下積みとしてどこかの企業に属したこともなく、最初から今もなお、自分でデザインして、製図を引き、型紙におこし、布を断ち縫製しています。その先の「販売」という形の事は、申し訳ないけれど 未だに素人のままで・・・。言っていいなら「知らない」です。



TATAMIZEを立ち上げてから18年。

途中の数年間、それはTATAMIZEとしては多くの時間ですが、工場での生産をしていました。

そこから得られたものは沢山あり、それによって、そこで関わらせていただけた沢山の皆様に支えられて、確実に「今」のTATAMIZEがあるのです。感謝しています。


展示会をして、半年前のサンプルを並べてバイヤー様に選んでいただく


オーダーを集計して、工場に発注し それが納品される頃には次の半年先のサンプルを作りそれを持って次の展示会を・・・・・・・


一体今、自分はどの季節にいて どの季節のものを提案しているのか?「一瞬」ですが その頃、よく見失いました。

勿論一瞬です。だけど、「変じゃないかな?」と思っていました。

だって、展示会では誰もが「そんな気分じゃない」のに、半年先のモノを提案し、選んでいるのですから。

「それがプロだよ」という人もいましたが・・・。


でも、そんなことは「小さいこと」で、私にとって一番大きな悲しみは

「そうやって作らなければ成り立たない」という、不思議な仕組みが当たり前の世界に、自分と自身のブランドは、確かにその時「その流れ」の中で、「絞り出すように」作りたいものを作るのだけれど

そこに

「買ってもらえる/店頭に並べていただける/それでお互い成り立っている」

という考えが、とても自然なふりをして、スッと横から入ってしまう事でした。


入ってしまうというと、とても他動的ですが、自分がそう意識してしまっているだけです。

「生業」は「ビジネス」 「ビジネス」が「生業」。これがあるから、どうしようもなく洋服が作りたい!だけでは成り立たない! という事を、「意識しなくてはならないんだよ」という変な意識



色々あるけれど、作りたいものを作れる条件の中で「どうですか!」と作る事があって、それを楽しめるから 洋服業界は楽しい世界なのに「データとか数字」が先に立つのか!


それは、本当は「結果的にあるもの」ですから

「スタートのタイミングから意識するべきではない」

或いは

「それは確かに要素としてはあるけど、そういったものも含めての中から生まれた集合体みたいなものが一つのデザインだから、それが先に立って何かを作り始めるのは不自然だ」 という考えを掲げる自分に、正しいと思いながらもとても疲れていました。



そんな過酷な(当時のわたしにとっては)展示会であっても、バイヤーさんとパチン!と目が合って「これ、いいですね~!!」と

ただの洋服好き同氏になれる瞬間があって、「そこ」を信じて進んでいた数年でした。



結局は

「まぁ やりたいことやって共感されたら最高!だからそれをやるよね!」


という、まったくお気楽で幼稚で 何よりも「強い」自分がいて、最後はそこが勝つのですが、その目線ではやはり「伝わらない」現場も確かにあって・・・・


どれが結局自分にとって正しいのか? 同じところを行ったり来たりして・・


最終的には一番強い「やりたいことやって共感されたら最高!」を信じまして


ならば、その一番強い思いを、メンドクサイことなく「生業」として生きていきたい!と思い始め、始めたNOWHERE ELSE という小さな場所と 結果的に最初の体制に戻った「今」があります。 



現在TATAMIZEの洋服や帽子は、間違いなく私自身がデザインし型紙を作り裁断し縫製しています。



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私が展示会を行い工場生産した事は「遠回り」とはけして言いませんし、思っていません。


今の、自身で生産していくスタイルに対しても

「今後もこのスタイルでしか生産していきません!」のような決意もございません。工場様の存在は、本当に有難かったし、今でも素晴らしく 学ばせていただいております。


どちらも経験出来て、本当に良かった。


どこかに所属し、そのやり方を叩き込まれ、

その後自身でやり始めるにしても「そこでの生産体制や仕組みしか選べない」としたら

「それを、正しいと信じるしかない」かもしれません。


だから、1人力100%の小さなブランドですが、小さいならではの経験ができて良かった。マイナーでよかったのかもしれません。


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世の中、色々と言われていて・・・・・アパレル業界も色々と


「大量に在庫を捨てている」「染色が環境汚染につながっている」「水を大量に使っている」「業界の体制自体が腐っている」「綿花の栽培に大量の農薬を使用している!」


などなど・・ネガティブな文章も流れます。


対して、「サスティナブル」とか「環境にやさしい!」とか「少量生産」とか「土に還る」とか・・・様々な文章と写真も流れてきます。

もしくは「洋服はもういらない」のように読める文章も 流れてきます。


私としては


「洋服は毎日着るものです」→これが当たり前のことです

洋服を着ることは日常の事です。

「ここが」ちゃんとわかっていないというか ちゃんと意識していないと思うのです。


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何も、「毎日丁寧に考えて洋服を選びましょう!」なんて言っていません。なんとなくのパターンで選んで着てもいいです。


そうゆうことではなく、「毎日着ている」事をちゃんと知っているのか?という事です。


一日に百の内仕事をしている人がいるでしょうか?朝起きてから寝るまでに、自分や家族のために百の内仕事をする。


洗濯は洗濯機、火はガスコンロ、明かりは電気・・・・スイッチを押すことは仕事とは言えません。


勿論、それを使って「作っている」のですから、何もしていないとか「誰にでも出来る」とは思っていません。


「何が言いたいのか?」と、言うと

自分でやってみて、はじめてそれが「好き」と思えるという事です。


もっというと、やってみて「好き」で「得意」で 内側の家族とか自分以外の「外」に対しても「業」として行えるというほどのモノだからこそ「生業」に出来ることなんです。


「洋服」なんて、その際たるもので、 「毎日洋服を着ている」んです。皆さん。

誰だって、生まれたその日のうちに何か身に着けます。死ぬまで。


そういう「当たり前」の事を「生業」にしたいと思えるほど「好きな人」が「アパレル」の人なんです。


そうゆう人の中で、「売れる」とか「ビジネス」とかで物を作り始めて、

「沢山作って残ったら捨てる」とか「大丈夫、土に還るから」とか そうゆう発想をもっている人なんて いないです。多分。


そもそも「こんなの作ったんだ!いいでしょ?」と誰かに見せて「いいね!着たい!」と言ってもらいたいだけですから、儲かるわけもなく、それでも「作りたい!」と思うわけです。それでいいんです。


「良くないな」と思えば誰も手にしないし、「いいな!」と思うから誰かが着てくれる。


その数だけ作れば、何の問題もない。楽しい。ただ、儲かりはしないけどね・・・。


という業界がアパレルのはずです。


勿論、「普通の服」というのは必要ですから、それは沢山作らないといけませんから

そのジャンルはまた「別の業界」であるわけです。


「流行っているから買わないといけませんよ!」「安くなっているから買ったほうがいいですよ!」と言いながら 洋服をデザインして提案している人は そもそも「アパレル業界」の人ではなく、別の業界だと思います。


アパレルでは、そんな暇があるなら「今日は、こんな服を見せたいな!」と思うのが普通です。


だから、僕自身が感じ そして今現在選んでいる生産体制は 当たり前のことだったと思っています。

一見して華やかで、いや 確かに華やかな人も沢山いると思います。


洋服で、誰かを 華やかに演出したりも出来るわけですから・・・


そうなんです、「誰かをよりよく見せたり、気分を変えることができる服」を作っていたり提案したりするのが「アパレル」という業界だと思っています。


大きいところじゃないんです。


とても小さな世界だけれど、大きな豊かさを「創っている」業界なんです。



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ステンカラーコートについて



・・・というわけで、やっとステンカラーコートの話をします。


2008年、今から13年前に作ったステンカラーコート


とあるお客様が、当時オーダーいただき、長年ご愛用いただいた一枚を、今年お預かりすることになり、改めてじっくりと当時のコートと対面いたしました。


13年前ですから、今と照らし合わせたら「感覚」が多少違う部分があっても、目指している方向は今も同じで


いや、むしろ「熱量」でいえば 今よりもずっと遠くを目指していたような気がして


私も そこから13年分年をとっているのですが、当時の自分に何か「こんなのが今も作れるか!」と 試されているような気にもなったり・・・・


こんなに、小さくマイナーなブランドですが、


自身で作ったコートが、お客様の下で愛され 成長し、何かを伝えに帰ってきたような気がしました。


「そうそう、こうゆう事を考えていたんだよな・・」と ブログを読み返し、沸々と制作意欲が沸いて

「このコートの続きを創ろう!」となったわけです。




「一つの『流れ』として 先端なアウターを作る事はこの先も無いでしょう。 そして多分TATAMIZEとしては この先もステンカラーコートを作り続けていくと思います」


「そして 『身にまとう』物として その言葉の通りであり  ワードローブとして『恥ない』仕上がりの一枚」だと思うんだけど・・・(2008年のブログより)



TATAMIZEを立ち上げた2004年。最初に創ったのはコートでした。

今も毎シーズン、コートを創っています。


コートには特別な思い入れがあります。

『身にまとう』物として その言葉の通りであり  ワードローブとして『恥ない』仕上がりの一枚」


それを2021年も目指しました。 13年という中途半端な月日ではございますが・・・2021年現時点でのステンカラーコートです。


そして、私はこの先もステンカラーコートを創り続けていくと思います。



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写真はこちら→ Soutien Collar Coat (tatamize.info)

に沢山ございます。文章は飛ばして写真のみご覧になりたい場合はどうぞこちらを





ステンカラーコート2021


TATAMIZEがコートに・・というか、創るものに共通してイメージしているのは「野暮ったさ」です。


どうにも「スマート」とか無機質な感じにはできない。創れないんです。

創る人に似るのだと思います・・・。


ピーター・フォーク演じる コロンボ刑事


そこを今もイメージしている。コートのシルエットとしては、だいぶそれに近づいてきたと思います。







今回のステンカラーコートは、

シェル+ライナー (ORDER)Soutien Collar Coat | nowher

の3パターンで それぞれ提案しています。



住む地域や、生活スタイルによって アウターに対してどの程度の機能を求めるのか?は人それぞれだと思います。

「ライナーがあったほうがいいな」

「ライナーはなくてもいいな」

「ライナーだけほしいかも」

と、色々なケースがあると思います。


TATAMIZEでは、基本的に新しい商品は受注生産の形をとっておりますので、オーダーいただいてからお時間はいただいてしまうのですが、その分「一枚だけでも作れる」のです。


ですから、無駄な在庫を作ることなく このような単品での提案も可能です。


まずは、シェルから




シェルの素材は、コットン100%。アクリルコーティングされたツイルです。

適度な張りと撥水性があり、かつ子供っぽくない深さも感じられる素材です。


今回、ライナーにも言えることなのですが、全体的に釦を使用しておりません。

これは、何度か他のコートでも意識したことなのですが、ステンカラーと言いつつドライビングコートをイメージしているからです。

釦が表に出てしまうと、車体を傷つけてしまう恐れがありますので、極力そういったものが無くても成立するように考えています。


当然、フロントが紐で結ぶような仕様だけだと左右のズレが生じますし、風の侵入も防げませんので、内側にファスナーを施しております。



*ファスナーの色はベージュに変更されます。






ネック部分も結ぶ仕様。

シェルも、ウールの襟は付属します。アルパカ混のシャギー。

首元が温かいだけでも、ずいぶんと冬の寒さから守ってもらえます。

当然、暖かくなれば不要ですから、取り外せるます。





襟の取り外しには、木製のトグルを使用。

細かいディティールも 何となく気に入れるように。





サイドにはハンドウォーマーポケットと 重なるように大きなパッチポケットが付きます。


「パッチポケット」というと、とても簡単なポケットの代名詞のように思われるかもしれませんが、使い場面によっては非常に悩ませるポケットでもあります。


まず、ポケット口を どのように処理するのか? シャツの胸ポケットであれば、「折り返してステッチ」ですが、コートやジャケットのような重衣料ではどうか?


バチバチにダブルステッチで仕上げるようなものであれば、ある意味簡単ですが、今回のように

全体として子供っぽくしたくない、けれどもわざざわ難しいものにしたくない、「必要?」と思われる人もいるでしょうが、手袋を入れたりと、何かと便利なんです。


今回は、ポケット口に見返しを付ける事でヨレを出来る限りなくし、シンプルにシングルの抑えステッチ。

そしてコバステッチで取り付けています。

同じよに見えても、三つ折りで簡単に仕上げてしまうと、一気に安っぽくなってしまいます。


ハンドウォーマーにはレザーの補強。






前端にゲームポケット。





サイドシームにゲームポケットが施されます。


図書館に行って10冊は手ぶらで借りて帰れます。




裏返した様子。


袖裏とマップポケット、パッチポケットの縫い口に当て布としてスレキが施されます。




そして、今回もハラマキが付いています。


「これ、必要ですか?」と聞かれることもありますが「はい!必要です!」と

きっぱりとお答えしています。


寒さというのは「風」を防ぐことで大きく変わってきます。風を防ぎ、体中の「首」を温めれば、それだけで大分温かいです。


使う事の頻度が少ないからいらないのではなく、ついていることを有難いなと思う瞬間があるからつけています。




袖口のアジャスターは、2本針バックル。ここは金属です・


ベルトが通るループには、裏側から綿テープを当てています。






シェルとライナーは、それぞれ施された面テープで結び合わせます。


例えば、この部分が釦だと、お互いどちらかに縮みが生じた際に、取り付けにより歪みが生じてしまいます。


テープで結ぶのは多少手間ですが、その分シェルとライナーにいい意味での距離感が生まれるので、そういったズレも回避できます。



そして、ライナーも単体で着ることができます。


シェルとの組み合わせの仕様を生かし、フロントをテープで結んだり


また、前後を変えて着たりも可能です。


実はこの「前後を変えて着る」のにも、テープの仕様に意味があって


洋服は、だいたい後ろが大きく前が小さく作ってあります。それは運動量や 体そのものがそういった大きさなのですが

ボートネックシャツのように 前後関係なく作ってあるものはありますが、たいていは

まして、コートのライニングですから尚更前後で大きさは異なります。なので、前後逆に着るとおかしなことになります


ですが、テープを結ぶ仕様にすることで 前端に若干隙間が生まれ、その分が丁度足りない分を補いますので、前後違う大きさなのですが 前後関係なく着られるのです。伝わりますでしょうか?・・・



また、ネックも、前後関係なく 同じラインになるように作っています。

ですが、そのままだと、仕上がったときに襟が変に立ち上がるような


スモッグのような感じになり、それはそれで良いのですが、より自然なラインになるように。襟ぐりにもテープを通し、多少ギュッと絞れるようにしています。






















いかにも「ライナーを着ています」のようにしたくなかっですし、ライナーとして考えられたからこその機能がデザインになっている着地を目指しました。

















「何か名作をベースにして、アレンジしてみました」


「生地を極限まで詰めました」


とかではないけど、とても「うちらしいステンカラーコート」だと思います。


長すぎる文章で、大変申し訳ございません。

ただ、文章で伝わりきるくらいなら、形にしていないかもしれません。


パチン!と目が合って 「いいですね!」がそこに生まれたら嬉しいです。

勿論、僕はこのコート 物凄く大好きです!


また数年後に見返したときに、その時の自分を奮起させるような、2021年でのそんな一枚を形に出来たと思っています。



創るのは、私一人ですから お時間はいただいてしまいます。ですが、その後の永い御付き合いをイメージしていただけるコートだと思っています。



読んでいただきありがとうございました。




TATAMIZE 八重畑





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